工場長の考えてること

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シン・ウルトラマン ネタバレなしレビュー(追記あり)

 

 


樋口真嗣 監督

庵野秀明 企画・脚本

2022 東宝円谷プロ・カラー作品

 


出演 斎藤工

長澤まさみ 

有岡大樹

早見あかり

西島秀俊 他

 


2022年5月13日、シン・ウルトラマンが公開された。複数回観てきたのでネタバレなしのレビューをしたいと思います。

 


□この映画は何?

シン・ゴジラ(2016)と同じチームによる特撮映画。2019年に製作が発表されたがコロナ禍のため延期。ようやく今回の公開となった。

ウルトラマンは現在も続くSFシリーズで、本作は66年前の初代ウルトラマンの強い影響下で製作された。

シン・ゴジラ同様、世界的に有名なキャラクター「ウルトラマンがもし現代に現れたら?」というコンセプト。リブート作品ではなくリイマジネーシヨン作品と言える。ウルトラマンシリーズとの直接の継続性はない。監督や製作陣により異なった作風になるのはDCコミックスの『バットマン』各映画化に近い。

 


□前知識は不要

わたしは幸か不幸か特撮作品に詳しくない。本作は音楽を含め沢山のオマージュから出来ている(らしい)がそんなもの一切知らなくても本作は楽しい。シン・ゴジラほどの速度ではないがテンポ良くスムーズに話は展開し、ダレる部分がない。ウルトマンは宇宙人。変身する。ぐらい知ってれば充分だ。

21世紀の日本に次々と禍威獣(かいじゅう)が現れ、ウルトラマンが闘う。巨大な宇宙人が現れ、それを小さな人間は見上げる。そんなわきゃないんだけど、そこを日本が誇る役者がまじめにやり切る。

かいじゅうと戦う。ピンチが訪れる。サスペンス展開もある。シンプルに楽しい。

もちろん色々と理屈をこねても良いけれどマーベル作品やバットマンのガジェットにツッコむのは意味がないのと同じでセンスオブワンダーを楽しむべし。 

タイトルにも「空想特撮映画」と書いてあるしね。

 


□コンパクトさと日常に突然現れる「特撮」の魅力

とは言ってもハリウッドの大作のようなビッグバジェット作ではない。世界が滅ぶとか都市ものすごく破壊されるとかのレベルのアクション描写はない。

本作も多くのシーンがCG作られているが山で禍威獣とウルトラマンが戦う、都市に突然宇宙人が現れる。ミニチュアっぽい破壊シーン。ウルトラマンの中には(かつては)人間が入って演技してたんだ、の再現。どれもハリウッドよりスケールは小さいけれど身近さにドキドキする。ハラハラする。

元々、特撮は知恵と工夫で観客を驚かせることを得意にしてきた。アイデアで喜ばせてきた。そんな雰囲気をシン・ウルトラマンは余すとこなく21世紀版にした。

ハリウッド大作と真正面で戦うのではなくて、違うものとしてドキドキワクワクを作り出している。

 


□禍特対は「いい大人たち」

シン・ウルトラマンの世界では禍威獣が定期的に日本に現れ災害を起こす。禍特対(かとくたい)はそれに対応するスペシャリスト組織。彼らは軍人でもないし、警察でも消防でもないし、ましてや政治家なんかではない。

本作では政治家や異星人がガチャガチャと陰謀めいた動きをするのだけれど、禍特対のメンバーは真っ直ぐものごとに向き合うし、まじめゆえに絶望もする。

田中哲司さん演じる室長は組織をかばい、有岡大貴さん演じる南は苦悩する。

西島秀俊さん演じる班長がある作戦に「ダメだ」と即断する場面がある。この人たちは人間的な判断ができる「いい大人」なのだ。明らかにこの人たちが性善説で動いていることを良く現したシーンだった。

有岡さん、西島さんらのファンの方々は充分楽しめるだろう。可愛いし、シブい。現代のヒーロー作品では苦悩したり、ややこしい現実に対することが増えた。社会がそれだけ複雑化したからであるが、こういう「いい人」たちがストレートに登場するのはとても珍しいと思う。この信頼できるウルトラマンの仲間たちがこの作品に不思議な明るさをもたらしている。この仲間たちが「いい人間」なのでウルトラマンもまたこのチームを信頼するのだ。

 


□みんなが色々言いたい映画はだいたい良作

特撮はマニアも多い。ウルトラマンには思い入れが多い人もいる。かく言うわたしも映画ファンではあるし、庵野秀明ファンでもある。

現在はサブスク含め、細分化された好みに映像メディアは応えている。

一家言ある人は多かろうし、言いたい意味はわかる。そしてそれが部分としては的確だとも思う。

本作の禍特対の「科学を信じる態度」はコロナ禍での「科学を信じよう」という姿勢に(たまたまではあるが)通じるものを感じる。

56年前、子どもたちはテレビの中の特撮に夢中になった。怪獣たちに夢を見た。そして現代の禍特対もまた56年前の科学特捜隊と同じく、「いい人間」たちだ。(違いがあるとすれば西島秀俊さんがアメリアカデミー賞の受賞作の主演というところか。しかしその名優が特撮映画に出演する意味は大きい)

本作はオトナの眼にも耐え、子どもたちも観れる「空想特撮映画」として完成されている。

言いたいことが多い映画はだいたい良作なのだ。万人に完璧な映画などない。

出来るなら次世代の子どもたちや若い方が本作を観てほしい、と願う。巨大スクリーンに映し出されるウソ。それこそが特撮、映画の本質だと思うからだ。

その点でシン・ウルトラマンはキチンと成立している。誰にでも開かれたセンスオブワンダー映画である。

 

■個人的追記(ネタバレなし)

庵野秀明作品では上司はクソ(碇ゲンドウ葛城ミサトなどなど)なのに今作は田中哲司さん、西島秀俊さん共にまとも

・ショットは正確、的確。広角は押井守のレイアウトシステムかよ。と思った。実相寺よりも。17台も同撮してたのは面白い。なんだか普通のシーンなのに「ヘン」

・なんだか突然下町の居酒屋が出てくるのは庵野秀明作品、突然の演歌とか。

・封筒やUSBメモリーが誤配されない。開封されたり、見てくれる信頼感合わせいいね。

・エピソードの繋がりなど問題を感じないわけじゃないが、ほんま人によるんだと思う。

エヴァンゲリオンが「甲冑を着たウルトラマン」と説明をされていたらしいが、ウルトラマン成田亨さんの本来の姿なのね

・最後のスタッフ、キャストがネタバレ

・ラストショット。めっちゃ映画。

 

 

#シン・ウルトラマン

#庵野秀明